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協同組合運動と定義力(にじ 2013年 春号 No.641 オピニオン)

協同組合運動と定義力

松岡 公明
にじ 2013年 春号 No.641

 定義とは何か?「ウィキペディア」によると「一般にコミュニケーションを円滑に行うために、ある言葉の意味や用法について、人々の共通認識を抱くために行われる作業である」と説明される。

 1+1=2という数式には「足し算の定義」があるように、組織運動にも定義が必要である。協同組合にも定義がある。1995年国際協同組合同盟(ICA)声明では「協同組合とは、人々の自治的な協同組織であり、人々が共通の経済的・社会的・文化的なニーズと願いを実現するために自主的に手をつなぎ、事業体を共同で所有し、民主的な管理運営を行うもの」と定義されている。

 レイドローは「思想の危機」を指摘したが、今日の協同組合運動の混迷は、言葉としての「理念」をさらに因数分解し、双方向コミュニケーションにより説明責任を果たしていくという「定義力」の弱さにあるのではないか。例えば「参加」にしても社会の構造変化のなかで組合員意識も多様化し、協同組合自身の事業経営体としての成長拡大、大規模化への構造的変化が参加をより困難にしている面もあるが、そもそも、なぜ、協同組合は参加しなければならないのか、多くの組合員には「参加」の意味や意義が理解されていない。「参加とは何か」、その定義力が問われているのである。定義を押えることは、本質を理解することにつながる。

 JAグループでは向こう3ヵ年の運動ビジョンとして、第26回JA全国大会で「次代へつなぐ協同」を組織決定した。多様な組合員構造があるなかで、「次代」とは何を指すのか、「つなぐ」とはどういうことを行うのか、「協同」の今日的な意義とは何かについて「定義づけ」する必要があるだろう。

 次世代の組合員後継者に「JAとは関係ないね」といわれたとき、何と答えるのか。あるいは「協同組合としての農協」について、どのように説明責任を果たすのか。組織リーダーが組合員や地域住民に対して「何を語るか」、ビジョンにかかる言葉の定義づけが大きく問われることになる。組合員が納得し行動するのは、JA側から提案され語られる内容に賛同するとともに、提案し語りかける人物に共感と信頼を覚えた時だけである。そこに組織リーダーの、まさにリーダーシップが求められる。

 ゲーテは言っている、「人は自分が理解できないものを、自分のものとは思わない」と。