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気候危機との闘いは、協同組織の存在意義をかけた取り組み (にじ 2020 秋号 No.673 オピニオン)

気候危機との闘いは、協同組織の存在意義をかけた取り組み

田中 夏子 Tanaka Natsuko 協同組合研究者
協同組合研究誌 にじ 2020 秋号 No.673

 「気候変動に立ち向かう」が、2020年の国際協同組合運動の焦眉の課題として掲げられた。SDGsでいえば目標13だ(同目標は、当初から感染症対応も含んでいる)。

 筆者の関係する長野県の協同組合でも理事会等で取り上げてはいるものの、「気候変動」という問題の大きさに、どこからどう接近してよいのか、私自身も問題提起が上滑りになる。

 それでも、長野県は昨年の台風19号で千曲川およびそこに流れ込む多くの中小河川や沢、用水が多数氾濫し、組合員も被災した。19号はじめ、近年台風が短時間に強大な威力を蓄え、しかも勢いを持続させながら移動速度が遅くなる現象が温室効果ガスに由来することは、昨秋、メディアでも盛んに発信され、この「異常」な事態が、今後は毎年繰り返されても不思議はないとの解説は耳目に焼き付いている。ましてや感染症という難題を抱えながらの気象災害への対応は、これまでの避難行動の常識の見直しを迫るものあり、この話題になると地域の会議でも熱を帯びる。

 そこに7月上旬九州はじめ東北に至るまで国土を総なめにしながら被害をもたらした豪雨が発生した。この尋常ならざる雨量は、南方の海上からもたらされる大量の水蒸気によるもので、その発生原因も海水温の上昇によるものという。

 身近で繰り返される豪雨災害の恐怖と、50年、100年単位の息長い想定で分析され目標化される気象変動の問題…気候危機は、両者を直結させながら、乗り越えていく必要がある。これがSDGsの目標13の下位のターゲットとして掲げられる「緩和」と「適応能力強化」だ。前者は「温室効果ガス排出の「緩和」として再生可能エネルギーの普及、化石燃料依存からの脱却」を意味する。また後者としては、頻繁に発生する気候危機の被害への「適応」として「防災、衛生・医療体制の整備、農業はじめ食料政策強化」等が挙げられている。

 両者とも、協同組合陣営が多様な形で取り組んできた課題であることは一目瞭然だ。ただし、上記の課題は2020年から2030年にかけて集中的に行わないと現在のペースでは危機の回避が難しくなるとされている。

 協同組織が手掛ける再エネの動向を見ると、自然資源の保全や管理の現場から地域住民が主体となって時間をかけて作り上げていく手法が有効なのは言うまでもないが、気候危機のタイムリミットを突き付けられた現在、これまで積み上げた手法をどう加速的に広げ得るのか大きな課題だ。少なくとも、地方自治との一層の連携が不可欠となる。

 やるべきことは広範囲に及び、しかも複雑だ。先進国におけるCO2削減対応が、地球の別の場所での環境破壊につながるケースも少なくない注1

 「下から」「ネットワークと連携を駆使して」「目の前にいない遠くの人々の安全の保障(フェアトレード)」という、協同組合が蓄積してきたこれらのことを、さらに高度化しながら気候危機にどう全力で投入できるのか、協同組合の存在意義をかけた課題と受け止めている。

注1 毎日新聞 2019年8月2日 「ニッケル鉱山開発で分断進む先住民」参照。CO2削減の象徴である電気自動車製造に不可欠なニッケル採掘のため、フィリピンの鉱山現場では、先住民の伝統的な狩猟・採集文化が危機にさらされている。