国際連携

〈ICAソウル大会レポートNo.2〉
ICAソウル大会2日目、日本から4人のパネリストが登壇しました(2021年12月2日)

 ICAソウル大会2日目は、「協同組合のアイデンティティを強化する」をテーマとした全体会・ラウンドテーブル(パネルディスカッション)・分科会およびその全体報告、続いて「協同組合のアイデンティティにコミットする」をテーマとした全体会・ラウンドテーブル(パネルディスカッション)・分科会を行ないました。日本から4人のパネリストが登壇しました。

 

【全体会2:協同組合のアイデンティティを強化する】

 全体会2では、スペインのバスク自治州副知事イドイア・メンディア氏とモンドラゴン協同組合広報部長イニゴ・アルビズリ・ランダザバル氏が報告しました。両氏からバスク自治州における協同組合の取り組みの紹介があったのち、グローバル市場の中で、私たちは協同組合のアイデンティティをいかにして競争上の強みにするのか、という問題提起がなされました。

 

【ラウンドテーブル:協同組合のアイデンティティを強化する―最大限に活用する―】

 続いて、全体会で報告した二氏に加え、韓国聖公会大学大学院協同組合経営学部のヤン・スンゴン教授、インドのIFFCO(インド農民肥料協同組合)U.S.アワスティ専務理事、アメリカの中部ジョージア電力協同組合マーケティング・広報スペシャリストのシランディ・ブラウン氏の3氏を迎えパネルディスカッションが行われました。3氏からそれぞれの協同組合についての報告後、ディスカッションでは「協同組合のアイデンティティを強化する上で、ゲームチェンジャーとなることは何だと考えるか」というコーディネーターの質問に対して、「地球環境問題と技術革新。環境問題はESG投資など財務にも影響するし、技術革新はとりわけデジタル革命・第4次産業革命を指す」(韓国・ヤン教授)、「アメリカでは人口問題だと思う。農村から都市への人口移動の影響は大きい」(アメリカ・ブラウン氏)、「やはり環境問題。IFFCOでは環境にやさしい液体肥料を開発した」(インド・アワスティ氏)、「DX。特にそのスピードが驚異的で、コロナでさらに加速した感がある」(スペイン・ランダザバル氏)と答えました。

 

【分科会:・・・によって、協同組合のアイデンティティを強化する】

 2回目の分科会は「・・・によって、協同組合のアイデンティティを強化する」を共通テーマに、5つの分科会が開催されました。5つの分科会は、

2.1「デジタル時代の活用によって、協同組合のアイデンティティを強化する」
2.2「倫理的なバリューチェーン・マネジメントの支援によって、協同組合のアイデンティティを強化する」
2.3「強力な起業家ネットワークの構築によって、協同組合のアイデンティティを強化する」
2.4「将来的な資本ニーズへの対応によって、協同組合のアイデンティティを強化する」
2.5「起業家的なイノベーションの支援によって、協同組合のアイデンティティを強化する」

をテーマにディスカッションが行われました。

 分科会2.2には、日本生協連の朝比奈まゆ子本部長が、分科会2.5には栗本昭JCA特別研究員が登壇しました。(なお、分科会2.2では同時通訳の日本語が流れないトラブルが発生し、大会事務局より日本の参加者にお詫びのメールと、参加者向け専用サイトに日本語バージョンの動画がアップされました。)

 分科会2.2では、朝比奈氏が、日本の「コープ商品」をSDGs視点から紹介し、その歩みは「SDGs」「エシカル消費」という言葉がない時代からつくられてきたこと、今は「おいしい、たのしい、が未来につながる」をコンセプトに開発していることを報告しました。

 また、スイス・フィンランド・ケニア・韓国からのパネリストからの報告を受けてのディスカッションでは、コーディネーターからの「モニタリング・コンプライアンスを確保するにはどのようなことを?」との質問に対し、朝比奈氏は「取引先に基準や法律順守を求めることは大切だが、対話を大切にしている。取引先とはパートナーシップで結ばれ、ともに成長するという視点が重要。生協が模範を示すことで、社会も変わっていく」と答えました。

 

【全体会:分科会2から何が浮かび上がったか?各分科会報告者インタビュー】

 全体会では、各分科会の報告がなされた後、コーディネーターから「今後このような取り組みを進める上で、重要だと思うことは?」という共通の質問が出されました。各報告者からは、教育・トレーニング・リサーチの重要性、資源・リソース・資金が必要、システムをどのように確保するか(寡占企業のものではなく共有財として確保するか)、セクター間・メンバー間の交流が重要などの意見が出されました。

 

【全体会3:協同組合のアイデンティティにコミットする】

 3回目の全体会のテーマは「協同組合のアイデンティティにコミットする」でした。インド女性自営者協会創設者であるエラ・バット氏が講演に立ち、50年前インドにおいて女性組織を立ち上げ、女性のための金融機関・保険・工場・教育の場など様々な事業を行ってきたことを紹介しました。氏は最後に、「女性が全て善というわけではないが、より自然に考えるし、時間軸が長く全体を俯瞰することができる。待っている人を取り残さないし、個ではなくグループを見る、平和と非暴力を大切に考える。このことは、今の世界ではかつてないほど重要性を増している」と締めくくりました。

全体会3でのエラ・バット氏のスピーチ

 

 

【ラウンドテーブル3:協同組合のアイデンティティにコミットする―よりよい世界づくりに向けて】

 産業労働者・熟練工業者・サービス生産者協同組合国際機構(CICOPA)ヨーロッパ(CECOP)会長であるイタリアのジュゼッペ・グイリニ氏、ICA青年委員会ヨーロッパ副委員長であるスペインのアナ・アギレ氏、世界信用組合評議会世界財団理事でありスクールズ・ファースト連邦信用組合会長である米国のビル・チェニー氏、カナダのデジャルダングループ事務局長・ガバナンスおよび持続可能な発展担当副会長のポーリン・ダンボワース氏(事前収録動画)によるラウンドテーブル(パネルディスカッション)が行われました。

 各団体の取り組み紹介に続いて、ディスカッションでは、コーディネーターの「今の社会的課題に対し、協同組合はどのような点でコミットできると思うか」という質問に対し、「若者にとっては、雇用、教育、世代をつなぐ架け橋の3点ではないか」(アギレ氏)、「『協同』こそが私の回答。非営利組織がこれから果たしていく役割は大きい」(アメリカ・チェニー氏)、「テクノロジーとイノベーション。(私たちは技術者の労働者協同組合だが)協同組合は起業家精神を大切にしてきたが、今後、『データ』はエネルギーと同様に非常に大切になる。」(イタリア・グイリエ氏)、「SDGsの視点。デジャルダンでは、様々なプロジェクトに人材や資金を提供し、ともに取り組むことでコミットしていく」(カナダ・ダンボワース氏)と答えました。

全体会3のラウンドテーブル
全体会3で話すICA青年委員会のアギレ氏

 

【分科会3:・・・に向けて、協同組合のアイデンティティにコミットする】

 3回目の分科会は「・・・に向けて、協同組合のアイデンティティにコミットする」を共通テーマに、5つの分科会が開催されました。5つの分科会は、

3.1「地球の存続に向けて、協同組合のアイデンティティにコミットする」
3.2「平和と平等に向けて、協同組合のアイデンティティにコミットする」
3.3「全世界での協同組合開発に向けて、協同組合のアイデンティティにコミットする」
3.4「コミュニティの強化に向けて、協同組合のアイデンティティにコミットする」
3.5「危機への強力な対応に向けて、協同組合のアイデンティティにコミットする」

をテーマにディスカッションが行われました。分科会3.1では日本生協連の二村睦子常務理事が、分科会3.4ではJCAの比嘉政浩専務理事がパネリストとして登壇しました。

 分科会3.1で、日本生協の二村氏は、日本生協連について紹介後、持続可能な生産と消費に焦点をあてた報告を行ないました。とくに日本の生協の食品リサイクルや食品廃棄の削減についての取り組み、気候変動への取り組みについて報告しました。

 また、ブラジル・エチオピア・インド・ドミニカ・コスタリカのパネリストからの報告も受けてのディスカッションでは、コーディネーターからの「今後ICAとしてこの地球存続のため取り組むべきことは?」の質問に対し、二村氏は「この問題は世界で協力して取り組むべき課題だが、各国では自組織の組合員にこの認識を広げることが重要。ICAには、各国協同組合がこの認識を共有するためのリーダーシップを発揮してほしい。また、各国において成果をあげた取り組みを国際的に発信してほしい。各国間の学び合いになるし、国際社会に協同組合の価値を広げることにもつながる」と答えました。

分科会3.1「 地球の存続に向けて、協同組合のアイデンティティにコミットする」で報告する日本生協連二村常務

 分科会3.4で、JCAの比嘉氏は、JCAの設立の経緯と役割を紹介しました。また、コロナ禍での地域支援、地域の困りごと解決や農作業支援での助け合い、移動購買車の運行など、各地の協同組合が連携し取り組んでいる地域づくりに関わる事例を報告しました。また、スペイン・バスク、カナダ、韓国のパネリストからの報告後、コーディネーターからの「伝統的な協同組合と新しい協同組合の違いは?」との質問に対し、比嘉氏は「農協や生協などの伝統的な協同組合は組合員の共益的利益を守りつつ地域の課題に取り組んでいる。昨年12月に労働者協同組合法ができたが、新しい協同組合としてのワーカーズコープの実態はその前からあるが、仕事起こしや福祉に関わる事業など、公益的な取り組みに比重がある」と答えました。

分科会3.4で、協同組合連携による地域づくりについて報告するJCA比嘉専務
分科会3.4には地元韓国からも多くの人たちが参加しました。

以上(文責:JCA事務局)

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