国際連携

コスタリカ社会的連帯経済全国会議所が日本の協同組合等を視察

 2023年11月27日、コスタリカの社会的連帯経済全国会議所(Cámara Nacional de Economía Social Solidaria(CANAESS))の事務局長ジェシカ・ブレネスさん(Ms. Jessica Brenes)が、コスタリカ共和国のアレクサンダー・サラス・アラヤ特命全権大使(H.E. Mr. Alexander SALAS ARAYA)とともに、日本協同組合連携機構(JCA)を訪れました。

 CANAESSは、協同組合、協会、研究・研修機関、財団など35の団体が会員となって設立された、コスタリカにおける社会的連帯経済(下記注)を推進するための組織です。

 JCAから、日本の協同組合の全体像、また、特にブレネス事務局長の関心の高かった日本の農協の概要を説明する一方、ブレネス事務局長からコスタリカの社会的連帯経済について説明を受け、相互に意見交換を行いました。

 11月28日にはJCAの案内で、ブレネス事務局長は、在日コスタリカ共和国大使館のウィリアム・カルボ公使参事官・総領事(Mr. William Calvo)とともに、生活クラブ千葉グループが2011年に設立したくらしと福祉の複合拠点「生活クラブいなげビレッジ虹と風」を訪問しました。

 いなげビレッジは、生活クラブ千葉グループに属する生活クラブ虹の街(生活クラブ生協(千葉))、生活クラブ風の村(社会福祉法人生活クラブ)、コミュニティケア街ねっと、ワーカーズ・コレクティブ樹の4団体が協働して運営する施設で、食品やお惣菜・お弁当の販売、デイサービスセンターやサービス付き高齢者向け住宅、訪問看護ステーションなど高齢者のためのさまざまなサービスの提供、障がいのある子どもたちや社会的養護下の子どもたちの支援、地域活動スペースでのさまざまな活動など、地域のくらしと福祉を支える多様な取り組みが行われています。

 UR団地の建て替えにあたり、団地人口の高齢化や買い物難民など、新しい地域課題への対応が迫られるなかで、UR用地内に生活クラブ千葉グループの提案(コンペで選出)により、”ユニバーサルな出会いの拠点”として同ビレッジが建設されました。全国の都市郊外に共通する課題に対するひとつの解決モデルとして、この複合施設が生まれたとのことです。建て替えられたUR団地を含めた地域コミュニティの拠点を創るこの試みは、協同組合が地域づくりを担っていこうという大きな挑戦でもありました。

 この日は、千葉で社会的連帯経済をすすめる「つながる経済フォーラムちば」世話人(幹事)でもある法政大学連帯社会インスティテュートの伊丹謙太郎教授も、現地にかけつけてくれました。

 現地では、生活クラブ生協(千葉)組織部組織企画課の中井孝子課長の案内で、くらしと福祉を支えるさまざまな施設を見せていただきました。その後会議室に移り、1976年の生活クラブ生協(千葉)設立に関わり同理事長を経て、1998年に社会福祉法人生活クラブを設立し、同理事長を2022年に退任されるまで約50年にわたり運動を牽引した池田徹さん(つながる経済フォーラムちば代表世話人、生活クラブ風の村特別常任顧問)からお話を伺い、生活クラブ千葉グループが、こうした取り組みを通じて地域に一歩ずつ「つながる経済」(社会的連帯経済)を広げていることが理解できました。

 ブレネス事務局長は、取り組みに感銘を受け、「こうした拠点をぜひコスタリカでも創りたい」と話しました。最後に、生活クラブ虹の街のお店「デポー園生」を視察し、この日の訪問を終えました。

※注:社会的連帯経済(SSE)とは、人を幸せにする経済、そうした経済を担う主体やそれを目指す運動のことを指し、2022年6月の第110回ILO総会における「ディーセント・ワークと社会的連帯経済に関する決議」において、次のように定義されています(引用にあたり見やすくするため、日本語の各文ごとに、箇条書きにしました。太字はJCAによるものです)。協同組合はSSEの主要な担い手と位置付けられています。

  • SSEは、集団的かつ/または一般的な利益に資するために経済的、社会的、環境的な活動に携わる企業、団体、その他の主体を包含する。
  • それらは、自発的な協同相互扶助民主的かつ/または参加型のガバナンス自治と自立、そして資産に加えて剰余金かつ/または利益の分配と使用において資本に対し人間と社会的目的を優先させる原則に基づいている。
  • SSE は、長期的な活動継続と持続可能性、そしてインフォーマル経済からフォーマル経済への移行を目指し、経済のあらゆるセクターで活動している。
  • SSE はその機能にとって本質的で、かつ人と地球への配慮、平等と公平、相互依存、 セルフ・ガバナンス、透明性と説明責任、そして ディーセント・ワークと生計の達成にかなう一連の価値を実践している。
  • 各国の状況に応じて SSE には、協同組合、アソシエーション、共済組織、財団、社会的企業、自助グループに加え、SSE の価値と原則に従って活動するその他の主体などが含まれる。

 

 

 

(写真は、在日コスタリカ大使館のフェイスブックの写真を了解を得て使わせていただきました)