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プラットフォームづくりに重要な協同組合の総合力 -「ジンジャーガールズ」から学ぶ- (にじ 2018 冬号 No.666 オピニオン)

プラットフォームづくりに重要な協同組合の総合力
-「ジンジャーガールズ」から学ぶ-

北川 太一 Kitagawa Taichi 福井県立大学 教授
にじ 2018 冬号 No666

 「ジンジャーガールズ」は、JA福井市女性部員の「家族の健康のために安全で安心な野菜作りをしたい」という呟きから生まれた。薬効の高いショウガに着目し、風邪の予防や冷え性対策、ダイエットや美容にも良いとされているために女性の関心が高まり、その栽培がどんどん広がったのである。

 まず重要な役割を果たしたのが、JAの営農指導と生活指導である。お互いが情報交換を行いながら連携し、多方面から活動を支援した。栽培管理方法や健康情報などを掲載した「ジンジャー新聞」の発行、休耕田を活用したショウガの栽培講習、商品開発に向けての企画提案、試食会の開催などである。

 こうしたジンジャーガールズの活動は、小規模農家、特に女性や高齢者が共通の場に参画する「プラットフォーム」づくりという観点から学ぶべき点が多い。取り組みの背景には、JA福井市における長年の女性部活動があった。部員数の低迷、高齢化、さらには活動のマンネリ化といった問題に対する解決の糸口を見出すべく、新たに目的別のグループを編成し、縦横のしくみづくりが行われた。組織ありきの活動だけではなく、活動ありきのしくみを導入することでメンバーのニーズに対応できる形を整えたのである。

 活動の展開にとって、JAが有する「総合力」が重要であったことは言うまでもない。営農指導(栽培講習)、生活指導(健康、女性組織事務局、新聞発行)、販売(農産物直売所、市場出荷)、生産購買(肥料、農機具)、生活購買(店舗)といった営農・生活関連部署との連携があった。さらには、信用・旅行(メンバーの視察研修資金を作るための積金)、総務・広報(地元放送局とコラボした収獲体験や料理コンテスト)なども含めて、JAの大部分の部署が活動に関与することでジンジャーガールズの取り組みが深化したのである。

 地道な活動ではあるが、地域農業への理解や関心を高めてつながりを創る、このことが実は長い目でみれば農業・農村の将来を展望するうえで重要な意味を持つ。その際、組織力と総合力を有した協同組合の存在・役割は大きいはずである。