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大震災復興にみる「岩手方式」と「宮城方式」(にじ 2011年 冬号 No.636 オピニオン)

大震災復興にみる「岩手方式」と「宮城方式」

松岡 公明
にじ 2011年 冬号 No.636

 東日本大震災の復興において、いわゆる「岩手方式」と「宮城方式」に注目が集まっている。岩手方式では、復興委員会のメンバーは「オール地元」の体制で、会議もすべて盛岡で開催、「なりわい」やコミュニティの再生など地域重視、現場主義の復興を目指している。これに対して宮城方式では、復興会議は東京の財界系シンクタンクや大学教授中心、県内関係者は12名中2名という構成で、東京での開催が半分。「特区」構想により規制緩和、集約化、企業化による新自由主義的な復興を目指す内容となっている。実に対照的である。

 岩手方式について、県知事は「答えは現場にある」として、宮古市の重茂漁協の取り組みを参考にしたと明言している。当漁協は、「漁師を地域外に出さない」「離脱者を出さない」として、漁船の確保と協業化を図り、仕事も収益も分配するという共同運営方式により漁業再開を着実にすすめている。震災前から、参加・民主的運営、教育、生協との生消連携など協同組合原則に忠実な組織運営や漁協運動の展開により、協同組合としての「民度」が高いといわれる。いざというとき「協同の底力」が発揮できるかどうか、日常的な関係性の蓄積、すなわちコミュニティ力と協同のネットワーク力の強化を教訓としたい。

 農山漁村は、自然との共生のなかで、無報酬の労働も含めてコモンズを維持してきた伝統や仕事・労働と暮らしが一体化した共同体の「基礎構造」に支えられている。岩手方式は、その基礎構造のうえの「1階建て」部分として、定住者たる生産者を束ねて、地域資源の有効活用と秩序形成に向けたエンパワーメントや民主的な合意形成のために協同組合が果たしてきた指導・組織運営機能を尊重し、「2階建て」部分では協同組合と各種関連産業との良質なパートナーシップとコラボレーションを期待している。岩手方式は「人間」「地域」への思想・哲学があり、宮城方式では2階建て部分の「経済の論理」だけが強調される。

 岩手と宮城、二つの方式の違いは、基礎構造から1階、2階建てまでの三層構造と人的結合体としての協同組合を通じた参加と自治機能の相互作用のメカニズムに対する認識と理解度の差と言えるだろう。「答え」は東京やTPPにあるのでなく、「現場にある」という意味において、地域にひらかれた協同組合運動の内実を高めるとともに、実態を伴ったその「見える化」を課題としなければならない