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協同組合運動と「土づくり」(にじ 2012年 春号 No.637 オピニオン)

協同組合運動と「土づくり」

松岡 公明
にじ 2012年 春号 No.637

 土壌学用語で「不可給態」という言葉がある。土壌中に養分はあるが、その物質循環がうまく機能せず作物に吸収されない状態のことである。日本の農地でも、土壌・作物診断に基づかない不適切な施肥により、土壌中の養分の過剰(「土のメタボ」)やバランスの悪化が顕在化している。農業生産力の向上、気候変動に強い安定した農業生産という生産技術面のみならず、農業の持つ自然循環機能の保全からも土づくりや土壌管理の重要性が指摘されている。

 東日本大震災の復興においては、それぞれの地域社会の「土壌」を顧みない「お仕着せの復興」が幅を利かせているようだ。枝ぶりもよく、一見、まことしやかに見える復興プランも、当事者意識がないままでは、その地域の土地には根付かない。復興に向けて、その地域の「不可給態」を可給態化するようなエンパワーメントのあり方が問われているのではないか。

 今日の協同組合運動は、レイドローが指摘した「信頼」「経営」「思想」の危機が同時進行の状態にあると言えよう。それぞれの3つの危機の源泉は何なのか、なぜ、そういう危機に直面してしまったのか、さらにはそれぞれの危機がどのようにリンクしているのか、危機の「本質」を問い直してみることが重要である。「レイドロー報告」は、単なる「報告」ではなく、協同組合関係者に対する「警告」とも言うべき「問い掛け」であったことを忘れてはならない。

 「戦略的な意思決定では、範囲、複雑さ、重要さがどうあっても、初めから答えを得ようとしてはならない。重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを見つけることである。意思決定において、最初の仕事は問題を見つけ、それを明らかにすること。この段階では、いくら時間をかけてもかけ過ぎることはない」(ドラッカー) これからの協同組合の革新も、ビジネス手法で性急な答えを求めるのでなく、危機の源泉を辿りながら、まずは土壌診断、健康診断によって「正しい問い」を探りあてることから始めなければならない。いくらいい種を蒔いても、いい作物は育たない。「国際協同組合年」という種を蒔くだけでは、いい協同組合は育たない。「正しい問い」・・・地域社会と協同組合内部の「不可給態」と向き合い、作物が育つためにどういう「土づくり」が必要なのか、そしてわが国の「協同の大地」を今後どのように耕していくのか、じっくり、しっかり考える国際協同組合年としたい。