刊行物

協同組合とオリンピック(にじ 2012年 秋号 No.639 オピニオン)

協同組合とオリンピック

松岡 公明
にじ 2012年 秋号 No.639

 ロンドン・オリンピックでは多くの勇気と感動をもらった。今回のオリンピックで目立ったのは水泳・卓球・フェンシングなどチーム力でメダルを勝ち取った団体戦である。個人の持てる能力と役割を最大限発揮した日本の38個のメダル獲得も史上最多であった。水泳メドレーリレー後のインタビューで「北島さんを手ぶらで帰らせるわけにはいかない」「日本競泳チーム27人のチームリレーです」の言葉に胸がつまった。また、メダルを取った選手の多くが家族や国民の支援に感謝の言葉を語ってくれた。スポーツの感動は実に爽やかである。

 感動といえば、協同組合運動にも多くの感動がある。新潟県下のあるJAでは平成18年に農産物直売所を開設した。雪国ゆえに周年供給が困難視され、当初は反対、不安の声があがった。1年間通じた栽培カレンダーづくりや生産指導が丁寧に行われた。春には地場の山菜が直売所を埋めるようになった。最大の課題は冬場の品揃えであったが、農家が根雪の下に保存していた人参・白菜・キャベツなどの「雪下野菜」が着目された。今や「雪下畑の仲間たち」という商標登録を行い市場出荷も視野に入れている。直売所の成功により園芸振興を本格化させた。

 23年度は営業日数362日、売上高は5億円を突破した。5億円達成記念・園芸生産拡大決起大会では地元消費者代表がJAに感謝とお祝いのメッセージを読みあげた。担当チームの職員は泣いていた。農家同士、農家と農協がお互いに励まし合い、支えあって、そのチーム力で直売所を「金メダル」に育てた。

 オリンピックと国際協同組合年(IYC)。オリンピックでは所謂マイナーなスポーツにも光が当たった。一方、IYCは光が当たっているかといえばまだまだである。地域に光を当てて、協同のメダルを育てていこう。協同組合もオリンピック同様、参加することに意義がある。否、参加が不可欠である。スポーツにもルールがあるように協同組合にも「出資・参加・利用」というルールがある。協同の金メダルは勝利してもらうものでなく、自分たちで創りあげるものである。参加して協議を重ねながら、経済的・社会的目的を達成していくことである。