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スモール・ワールド・セオリー(にじ 2013年 冬号 No.644 オピニオン)

スモール・ワールド・セオリー

松岡 公明
にじ 2013年 冬号 No.644

 人間にも生活習慣病があるように協同組合組織にも生活習慣病がありそうだ。手段と目的の混同、リスクの回避、前例主義、形式主義がはびこり思考の硬直化あるいは停止状態が広がっている。「無関心こそが最大の罪悪である」(マザー・テレサ)。自分の立場・経営さえよければいいという「タコツボ化」現象が蔓延し、全体最適が追求されず、部分最適の集合体に陥って業務連鎖、組織連鎖の視点が欠落している。「事なかれ主義」「相互不可侵条約」による仕事の仕方が<総合無責任>を結果していることに気づいていないようだ。生産者・消費者、産地、地域社会の問題点をさらけ出し組織間・部門間の横断的なぶつかり合いのなかから、よりよい解決策を模索し実践と反省、学習を繰り返していくことが求められている。

 一方で「地域コミュニティ力」が問われる・求められる時代となっている。市町村合併、協同組合組織合併により住民、組合員サービス機能の低下が指摘されている。「私助」「共助」「公助」の連携は、農業生産・産地づくり、高齢者福祉、子育て支援、環境保全、防災、祭り・伝統文化の継続など、テーマや課題によって「動態的」に関係づけて考えなければならない。要はコミュニティのガバナンスは眠っている「ご近所の底力」を掘り起こすことにほかならないのである。

 協同組合もコミュニティも単体で考えてはいけない。 「スモール・ワールド・セオリー」という面白い理論がある。アメリカの人口は2億人程度だが、そこから無作為に2人を選んで「友達の友達はまた友達」というふうに辿っていくと、何人ぐらいで両者はつながっているか。結局、平均6人の友達を介してつながっていた。これが「六次の隔たり」と言われている。つまり、自分とはまったく縁もゆかりもない他人であっても6人ぐらい友人を辿っていけば、その人に到達できるというわけである。「六次の隔たり」で億を超える人間が友達としてとつながることができるとすれば、それは驚異的というべきかも知れない。案外、世間は狭いのである。

 この理論を協同組合、コミュニティに当てはめてみたらどうだろう。それぞれの組織間に社会的、経済的な関心に基づくコミュニケーションがあれば、つ ながりがつながりを生むというネットワークの外部性が働き「価値の連鎖」も構築できる可能性が広がる。人間もお互いの趣味を通じて知り合いになり、そうした関係から友達も増えていくように、お互い共通する課題・問題点を共有していくなかで、その解決に向けて協力関係も構築していけるのではないか。一つの 協力関係の経験から、さらなる多様な協力関係の輪が拡大、形成されていくという図式を描くことができるだろう。関係性(結びつき)から社会を見直し、「他者」との関係を結び直していく作業による協同組合間協同や重層的なコミュニティづくりを協同組合運動のセオリーとしなければならない。