刊行物

誇りをもって頑張れ(にじ 2014年 秋号 No.647 オピニオン)

誇りをもって頑張れ

比嘉 政浩
にじ 2014年 秋号 No.647

 松岡公明(現農林年金理事長)の後任として協同組合研究部担当理事に就任した比嘉と申します。前任者に比べ知識も冗談も引き出しが少ないのですが、この職を意気に感じて務めます。よろしくお願いします。

 私は3月までJA全中で勤務していました。今春来、「JA全中廃止」「信用事業は分離」「JAは他法人に転換」と次々報道され、緊張と焦り、怒りを覚えました。

 私の母は80歳。幸い元気で携帯メールを打ちます。ある日、「大丈夫か」のメール。新聞のあの見出しなら確かに心配するかもしれません。

 報道ではJA全中が各JAを縛っているとされますが、JA全中がJAに厳しく対応するのはJAの経営破たんの懸念など規律性確保に関する時だけです。JAはJA全農に任せず自分で農産物を売るべし、そうした先進事例はある、という報道もありますが、消費地に近く自分で売り切れるJAと遠隔地で大産地のJAでは自ずと違います。JA全農は農家にメリットがあるよう工夫し、JAに事業利用を呼びかける存在です。

 最もひどいのは、規制改革会議農業ワーキンググループの「JA全農を株式会社に転換する」とのまとめです。この文章の主語は誰でしょう。政府は、ですか? 協同組合を理解している人の書く文章ではありません。この取りまとめに対して、生協、漁協、森組など日本の多くの協同組合が懸念を表しましたし、ICA(国際協同組合同盟)も強く非難しました。当然でありかつ嬉しかったです。

 もちろん、JAグループに課題がないとは言いません。この機会に総点検し自らを見直す覚悟が必要でしょう。

 しかし、一連の情報・報道には意図を感じます。TPPに反対だからでしょうか。企業のビジネスチャンスを奪っているというのでしょうか。ドリルで何を壊す気でしょうか。もし、「地域を守る」仕組みを壊そうとしているなら、これに全力で抗することは当然ではないでしょうか。

 私は母と何度かやりとりしました。本件に関するメールの最後に、「誇りをもって頑張れ」。

 親はありがたい。ハイ。誇りをもって頑張ります。誇りを持ち続けられるよう、悔いなくこの異常な事態と向きあいます。