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JAにおける総合事業と准組合員制度の危機について(にじ 2015年 秋号 No.651 オピニオン)

JAにおける総合事業と准組合員制度の危機について

冨士 重夫
にじ 2015年 秋号 No.651

 今後、正組合員の減少と准組合員の増大がより一層すすむ状況の中で、JAグループの進むべき方向は、准組合員制度を強化し、金融を含む総合事業を展開する組合として、農家の職能組合と地域協同組合の性格を併せ持った組織として、地域の農業や地域経済・社会の発展のために存在して行くことです。

 しかし、今回の農協改革で明らかになった政府の考え方は、法制度の建て付けからしてもJAは職能組合が基本であり、農業に従事しない准組合員が増大し、正組合員は少数という状況が今後も続くのであれば、金融である信用事業の譲渡による代理店化か、あるいは信用事業・共済事業を分離して、JAは専門農協化すべきである、という方向感に示されていると思います。

 地域農業の振興に積極的に取り組むのは職能組合たるJAとして当たり前であり、これを実施したからといって現行制度のままで良いなどと言うことは無いと思います。

 我が国の協同組合法制は、事業別の協同組合法を根拠としており、農協法も農業者の職能組合としての協同組合法です。単営が原則である金融の兼営をなぜ認めたかと言えば、農業者の営農を支える事業として協同組合金融が必要だからと言うことです。

 今後、准組合員がさらに増加し大宗を占めて行く状況の中で、JAグループは金融を柱とした総合事業体の必要性、法制度上の総合事業体の確立に向けた位置づけを明確にして、具体的な対応策に取り組む必要があります。

 そもそも准組合員制度は、産業組合時代からの取組みも踏まえ、農業基盤の脆弱性、農業収益性の低さ等により組合経営の安定化をはかるなどの観点から、農家以外の支配を排除するため共益権を制限された組合員として、地域住民等を組合員とするために措置されたものです。

 これまでの農業構造の変遷、地域経済の衰退、地域人口の高齢化・過疎化の中で、農家の協同組合であることを基本としつつ、地域のインフラとしての様々な役割・機能を果たしながら職能組合と地域協同組合の性格を併せ持った総合事業体として取り組んできたJAグループが、今後の目指すべき方向として地域住民を組合員とし、金融・共済や生活、高齢者介護などを含む総合事業を展開する協同組合として進んでいくためには、組合員制度、事業別・職能別協同組合法制、また公益性という観点からの地域協同組合という大きな枠組みの検討も含め、具体策を考える必要があります。