刊行物

「改革」を実践するための「説明責任」(にじ 2015年 冬号 No.652 オピニオン)

「改革」を実践するための「説明責任」

勝又 博三
にじ 2015年 冬号 No.652

 10月23日にJC総研常務理事に就任しました。JA全中に32年半勤務した後に、独立行政法人に4年在籍していました。JA全中を離れている間に生じていた、いわゆる「農協改革」と称するJAグループ、さらには協同組合のアイデンティティにまで及ぶ攻撃に強い苛立ちを感じていました。これまで特定課題でのJA対応が多かったこともあり、職責をどれだけ果たせるか不安もありますが、よろしくお願いします。

 「創造的自己改革への挑戦」が第27回JA全国大会決議のメインテーマです。このテーマを踏まえ、自らの「改革」をどのように捉え、どのように実践していくのか、さらにどのように評価されるかを今一度考えることは大切なことだと考えます。

 「改革」は、その主体を明確にする必要があります。『協同組合が組合員や組織のために自らを「改革」』するという抽象的な表現では、その意味がよく分からないというのが本音ではないでしょうか。そのことは、「改革」を実践する主体が「改革」を自らの課題として十分認識しきれていないという事情によるものか、あるいは、「改革」の押し付けに反発があるからなのかもしれません。

 JAグループのJA・連合会・中央会それぞれが、その事業や組織について、これまでどれだけ説明責任を果たしてきたでしょうか?とりわけ、JAに寄せられる組合員からの多様な期待に対して「なぜ取り組まないのか」について、それが自明であるといった論理で、説明責任が十分に果たされていなかったのではないでしょうか。

 大会決議では、6分野の最重点実施分野が掲げられ、各分野の方策・事業の具体化と実践は個別のJA・連合会が取り組むことと整理されています。まさしく、この実践のための具体化において、説明責任が問われると考えます。つまり具体性のある事項を「取り組む、あるいは取り組まない」の結論を示すだけでなく、結論に至った判断過程やリスク認識等々について説明責任を果たしていくことが、「改革」の実践と評価につながっていくことにもなると思います。

 「改革」の主体はあくまでも個々の協同組合です。組織・事業環境やリスクを踏まえ、その取組みについて説明責任を果たすには相当な覚悟とエネルギーが必要です。しかし、この説明責任を怠った「自己改革」は「自己満足」としか評価されないことも事実だと思います。